虫の知らせ。初盆。

立花月夜の心霊事件簿

彼が死んだのは現実では知らされていない。
そんな関係。
だけれど、私には確信がある。
あの人は死んだのだ。と。
あれから何回私は彼を思って泣いただろう。

彼が亡くなったのを感じたのは冬だった。
その日、小さな子供を幼稚園に連れて行ったかえって来る途中のバスの中で涙が止まらなくなった。
「ああ・・・彼が逝ったんだな」
唐突にそう思って、自分でもびっくりするくらい悲しくなった。

その年の夏。彼がなくなっていたら初盆。
その時に彼は私の家の棚の横に立っていた。半透明の姿で。
遠方で夫と暮らしている私と最後の電話で、
「お前があまり連絡をくれなくて寂しい」
といった。
プライドが高いあの人の最初で最後の弱音を、私はまだ忘れることができない。
そんな彼は亡くなった後、私に会いに来たのだろう。
彼がいる戸棚の横にご飯と花とを供えた。
お盆前半は私の家にいて、後半はいなくなった。
本当の家に帰ったのだろう。
それが三年続く。とあることをきっかけに彼は来なくなった。
あるべきところに戻ったんだ。
それが私の来なくなった彼への答え。

彼には時々会う。
夢の中で彼は付き合っていた時と同じ元気さで、いろいろなところに連れて行ってくれる。
一緒に笑って、怒って。
病気で衰弱して逝った彼は、その姿を最後まで私に見せなかった。
私も見ようとしなかった。彼が望んでいなかったから。

最後の夢の時、夢の中で気が付いてしまった。
「彼はもう亡くなってるんだ」
と。
それから夢でも彼を見ていない。

夫とは違う意味で、私に誰よりも近かった。

彼につけてもらった子供たちの名前と彼が左手にしていた指輪が形見。
死者になったら思いは終わる。

そんな簡単なものじゃない。
そう思う出来事です。

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